ただ流行に乗せただけでなく、名門として伝統的な時計の美しさを追求していることもユリスナルダンの大きな魅力と言えるでしょう。
ちなみにこの「伝統的デザイン」についてユリスナルダンの粋を最も感じられるのは、「サンマルコシリーズ」ではないでしょうか。
当該シリーズにはいくつかのラインナップが存在しますが、特筆すべきは舐める文字盤が大変美しいこちらです。
2011年にユリスナルダンは、エナメルダイヤルの総本山「ドンツェ・カドラン」を買収しました。パネライ 時計 人気時計業界屈指のクロワゾネ技術を持つと評価されていたユリスナルダンの文字盤製造は、これによりさらに磨きがかかることとなります。
ちなみにクロワゾネとは、金属の下地に別の金属のワイヤーや帯をろう付けして線画を描き、その隔壁で区切られたそれぞれの部分に色付きエナメルを満たして焼成する技法を指します。ローマやビザンチン,あるいは明代の中国や日本でも広く使用例があり、一時は廃れたものの、19世紀に日本の優れた有線七宝に触発されたフランスにおいて復活されました。
線画の中に何度も何度もエナメルを流し込むことで色を重ねるため、美しく深みのある描画が可能となる一方で、一本いっぽんの製造に長い時間とコストがかかってきます。そのため年間製造本数はきわめて少なく、相場は中古であっても100万円超えが当たり前。ユリスナルダンはハイブランドに位置しますが、その中でも特にハイエンドラインとなっております。
このようにユリスナルダンはマリンクロノメーターの時代から変わらぬ「創造力」「開発力」を武器に、新しくも伝統的機械式時計の深みを味わえる、銘品の数々を世に送り出し続けてきました。
もっとも、大々的な広告を行っていない上、日本でのマーケティングに積極的ではないケリンググループに所属することから、ユリスナルダンの知名度は高くはありません。
しかしながら、確かな精度に高い実用性,そしてデザインの美しさ。
どれをとっても最高級の魅力を誇るユリスナルダンには根強いファンも多く、時計玄人が選ぶ時計として、業界内の存在感は増すばかりです。