時計の魅力は機構やスペックだけではなく、その奥に秘められた物語にもある。ブランド哲学や作り手によって込められた思い、そのモデルが歩んだ数奇な歴史など。
そうした物語は時間という概念を可視化し、所有する喜びを改めて実感させてくれる。だからこそ男たちはそんなストーリーのある時計に、心を躍らせるのだ。
「オウタヴィア ホイヤー02 クロノグラフ」
/TAG HEUER タグ・ホイヤー
男の情熱とともに、先進の追求は決して止まらない
「タグホイヤー 時計 レディース」を語るには、ひとりの男の存在が欠かせない。ジャック・ホイヤー。創業家の直系4代目に当たり、1960年代には「カレラ」や「モナコ」をはじめ、数多くの名作時計を生み出した。腕時計のオウタヴィアも’62年に彼が手掛けたものだ。
この回転式ベゼルを搭載した画期的なスポーツクロノグラフのベースは、’33年のアーカイブだ。その名前は自動車の“オートモービル”と飛行機の“アヴィエーション”から成り、時代の最先端を象徴するに相応しい、と名付けられたのだろう。
ジャック・ホイヤーは製品開発以外でも活躍。スティーブ・マックイーンを広告塔に起用するなどPR面でも辣腕を振るった。
革新性は受け継がれ、今回の復刻はファン参加型ウェブキャンペーンによる5万人以上の投票から決定。そんなプロセスにも、ジャックの先取の精神は宿るのだ。もちろん往年を彷彿させるのは佇まいだけで、その中身は自社ムーブメント、ホイヤー02と最新だ。
「タンク アメリカン LM」
/CARTIER カルティエ
SSケース、縦45.1×横26.6㎜、自動巻き。61万7500円/カルティエ 0120-301-757
名作は時をかけて磨かれ、普遍性を現代に伝える
2017年で誕生100周年を迎えたカルティエの名作「タンク」。ネーミングの由来でもある戦車(タンク)をデザインモチーフとすることはよく知られる。発表当時の20世紀初頭、戦車は大戦を終結させ、パリを解放へと導いた自由の象徴だった。
またそのデザインは曲線を主体としたアール・ヌーボーからの脱却で、パリで花開いた直線的で幾何学的なアール・デコスタイルの結実でもあった。まだ懐中時計が主流だった時代、そのデザインと名を授かることで新たな時計史の幕開けを宣言したのだ。